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介護ハラスメントとは?事例と種類を職場のチェックシートや相談窓口で解説!

手前の水色の服を着た人間がピンク色の服を着た女性に指を指す

「介護ハラスメントの具体例がわからない」「職場でどう対応すればいいのか不安」と感じていませんか。介護現場では、利用者や家族からの暴言、暴力、過剰要求などに悩む職員も少なくありません。この記事では、介護ハラスメントの定義や種類、よくある事例、職場で使えるチェックシート、相談窓口までわかりやすく解説します。早めに状況を整理し、安心して働くための対策を確認できます。

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介護ハラスメントの定義と基本知識

ここでは、介護ハラスメントの定義や基本知識について解説します。介護現場で起こりやすい言動や、カスタマーハラスメントとの違い、介護職への影響を理解することで、適切な予防と対応につなげることができます。

介護ハラスメントとは何か

介護ハラスメントとは、介護サービスの利用者やその家族などから、介護職員に対して行われる暴言、暴力、威圧的な態度、過剰要求、セクシュアルハラスメントなどを指します。

2021年度(令和3年度)の介護報酬改定では、すべての介護サービス事業者に対し、職場におけるセクシュアルハラスメント・パワーハラスメントの防止に向けた方針の明確化や相談体制の整備が運営基準に位置づけられました。その後、法改正や制度の見直しが進み、現在では利用者や家族からのカスタマーハラスメント対策も事業主の義務となっています。

介護現場では、身体介助や生活支援など利用者との距離が近い場面が多く、職員が被害を受けても「仕事だから仕方ない」と我慢してしまうことがあります。しかし、こうした言動は職員の尊厳や安全を脅かす問題であり、組織として対応する必要があります。

介護ハラスメントに該当しやすい行為の例は、以下のとおりです。

種類

具体例

身体的暴力

叩く、蹴る、物を投げる

精神的暴力

暴言、脅し、人格を否定する発言

過剰要求

契約外のサービスを強要する

セクシュアルハラスメント

身体を触る、性的な発言をする

出典:令和3年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
出典:改正労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法(ハラスメント対策の強化)について|厚生労働省

介護ハラスメントとカスタマーハラスメントの違い

介護ハラスメントとカスタマーハラスメントは、サービスを提供する側が利用者側から不当な言動を受ける点で共通しています。カスタマーハラスメントは、顧客による暴言や理不尽な要求などを広く指す言葉です。改正労働施策総合推進法では、社会通念上許容される範囲を超えた顧客等の言動により労働者の就業環境が害されることと定義されています。

一方、介護ハラスメントは、介護サービス特有の環境や人間関係の中で発生する点に特徴があります。認知症による言動や、家族からの過剰要求、身体介助中の性的言動など、介護現場ならではの事情を踏まえた対応が求められます。

両者の違いを整理すると、以下のようになります。

項目

介護ハラスメント

カスタマーハラスメント

主な発生場所

介護施設、訪問介護の現場など

店舗、窓口、コールセンターなど

加害者になり得る人

利用者、家族など

顧客、取引先など

特徴

介護・福祉的な事情が関係しやすい

接客や取引上の不当要求が中心

対応の視点

職員保護と利用者支援の両立が必要

従業員保護と業務上の線引きが重要

出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律要綱|厚生労働省

介護ハラスメントが介護職に与える影響

介護ハラスメントは、介護職員の心身に大きな負担を与えます。暴言や威圧的な態度を繰り返し受けると、不安や恐怖心が強まり、仕事への意欲が低下することがあります。また、身体的暴力やセクシュアルハラスメントを受けた場合には、強いストレスや精神的な傷につながるおそれもあります。こうした状態が続くと、休職や離職の原因となり、介護現場の人手不足をさらに深刻化させる可能性があります。

介護ハラスメントによる主な影響は、以下のとおりです。

  • 精神的なストレスや不安感が増える
  • 仕事への意欲や自信が低下する
  • 利用者への対応に恐怖心を抱きやすくなる
  • 休職や離職につながる可能性がある
  • 職場全体の雰囲気やサービス品質に影響する

職員が安心して働けない環境では、質の高い介護サービスを継続することが難しくなります。そのため、事業所には早期に相談できる体制や、被害を職員個人の問題にしない組織的な対応が求められます。

頭を腕で支え辛そうに壁に寄りかかる看護職員女性
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介護ハラスメントの種類と具体例

ここでは、身体的暴力・精神的暴力・セクシュアルハラスメント・家族や利用者からの過剰要求など、介護現場で起こり得る介護ハラスメントの主な種類と具体例について解説します。

身体的暴力にあたる介護ハラスメントの事例

身体的暴力にあたる介護ハラスメントとは、利用者や家族などが介護職員の身体に危害を加える、またはそのおそれがある行為を指します。介護現場では、食事介助、入浴介助、排泄介助、移乗介助など、職員と利用者の距離が近くなる場面で発生することがあります。認知症や体調不良などが背景にある場合でも、職員がけがを負ったり恐怖を感じたりする状況は放置すべきではありません。

身体的暴力にあたる具体例は、以下のとおりです。

  • 職員を叩く、蹴る、つねる
  • 髪を引っ張る、腕を強くつかむ
  • 杖や食器などの物を投げつける
  • 介助中に押し倒そうとする
  • 唾を吐きかける、噛みつく

このような行為があった場合は、職員個人で抱え込まず、発生状況を記録し、管理者やチームで対応方針を共有することが大切です。

精神的暴力にあたる介護ハラスメントの事例

精神的暴力にあたる介護ハラスメントとは、暴言や脅し、侮辱的な発言などによって、介護職員に精神的な苦痛を与える行為を指します。身体的なけががなくても、繰り返し受けることで強いストレスや不安につながることがあります。介護職は利用者や家族と継続的に関わるため、精神的暴力が続くと、職員の自信や仕事への意欲が低下し、休職や離職の原因になる場合もあります。

精神的暴力にあたる具体例は、以下のとおりです。

  • 「役に立たない」「辞めてしまえ」などの暴言を言う
  • 人格を否定するような発言を繰り返す
  • 大声で怒鳴る、威圧的な態度を取る
  • 根拠のない苦情を何度も申し立てる
  • 「訴える」「責任を取れ」などと過度に脅す

精神的暴力は外から見えにくいため、発言内容や日時、状況を記録し、早めに相談できる体制を整えることが重要です。

セクシュアルハラスメントにあたる介護ハラスメントの事例

セクシュアルハラスメントにあたる介護ハラスメントとは、介護職員の意思に反して行われる性的な言動や接触を指します。介護現場では、身体介助や居室での対応など、職員と利用者が近い距離で関わる場面が多いため、被害が起きても職員が声を上げにくいことがあります。しかし、性的な発言や不必要な接触は、職員の尊厳を傷つける重大な問題であり、業務上当然に受け入れるべきものではありません。

セクシュアルハラスメントにあたる具体例は、以下のとおりです。

  • 職員の身体を不必要に触る
  • 性的な冗談や発言を繰り返す
  • 交際や個人的な連絡をしつこく求める
  • 入浴介助や排泄介助中に性的な言動をする
  • 容姿や年齢、性別に関する不快な発言をする

被害を受けた職員が我慢し続けると、精神的な負担が大きくなります。事業所は相談しやすい窓口を設け、複数名での対応や担当変更などを検討する必要があります。

家族・利用者からの過剰要求にあたる事例

家族・利用者からの過剰要求とは、介護サービスの契約内容や職員の業務範囲を超えて、不当または過度な対応を求める行為を指します。介護職員は利用者や家族の要望に丁寧に向き合う必要がありますが、すべての要求に応じることが適切とは限りません。無理な要求に対応し続けると、職員の負担が増えるだけでなく、他の利用者へのサービスにも影響が出る可能性があります。

過剰要求にあたる具体例は、以下のとおりです。

種類

具体例

契約外の要求

掃除や買い物など、契約にない作業を強要する

長時間の拘束

業務終了後も説明や対応を求め続ける

個人的な依頼

職員の私用連絡先を聞く、個人的な用事を頼む

過度な謝罪要求

土下座や必要以上の謝罪を求める

不当な責任追及

事実確認前に一方的に職員を責める

過剰要求への対応では、できることとできないことを明確にし、職員個人ではなく事業所として説明することが重要です。契約内容やサービス範囲を事前に共有しておくことで、トラブルの予防にもつながります。

白色の壁と突き出される右手
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職場で起こる介護ハラスメントの主な場面

ここでは、訪問介護や施設介護、夜勤・入浴介助・排泄介助など、介護ハラスメントが発生しやすい具体的な場面について解説します。場面ごとのリスクを知ることで、事前の予防や適切な対応につなげやすくなります。

訪問介護で起こりやすい介護ハラスメント

訪問介護では、職員が利用者の自宅に一人で訪問することが多く、周囲の目が届きにくい環境で介護ハラスメントが発生する場合があります。利用者や家族から暴言を受ける、契約外の家事を求められる、長時間引き止められるなどの事例が代表的です。また、密室に近い空間であるため、セクシュアルハラスメントや身体接触が起こった際に、職員が相談しにくいこともあります。

訪問介護で起こりやすい事例は、以下のとおりです。

  • 契約にない掃除や買い物を頼まれる
  • 「帰るな」と長時間引き止められる
  • 家族から一方的に苦情を言われる
  • 利用者から身体を触られる
  • 暴言や威圧的な態度を受ける

訪問介護では、職員個人の判断に任せず、事業所として対応ルールを明確にしておくことが重要です。

施設介護で発生しやすい介護ハラスメント

施設介護では、複数の利用者が同じ空間で生活しているため、日常的な介助や見守りの中で介護ハラスメントが発生するケースは少なくありません。食事介助中に怒鳴られる、移乗介助中に叩かれる、他の利用者の前で職員を侮辱するなど、身体的・精神的な被害が起こる可能性があるほか、家族から職員の対応に対して過剰要求や苦情が寄せられることも想定されます。

施設介護で注意したい場面を整理すると、以下のようになります。


場面

起こりやすいハラスメント

食事介助

暴言、食器を投げる、介助拒否

移乗介助

叩く、つねる、押す

レクリエーション

職員への侮辱、威圧的な発言

面会時

家族からの過度な苦情や要求

居室対応

性的な発言、不必要な接触

施設では職員同士で情報を共有し、同じ職員だけに負担が偏らない体制を整えることが大切です。

夜勤・入浴介助・排泄介助で注意すべき場面

夜勤や入浴介助、排泄介助は、介護職員と利用者が近い距離で関わるため、介護ハラスメントが起こりやすい場面です。夜勤では職員数が少なく、暴言や暴力が発生してもすぐに助けを求めにくい場合があります。入浴介助や排泄介助では、身体に触れる必要があるため、利用者が不快感や混乱を抱き、暴力やセクシュアルハラスメントにつながることもあります。

特に注意すべき場面は、以下のとおりです。

  • 夜勤中に一人で利用者対応をする場面
  • 入浴介助中に身体を触られる場面
  • 排泄介助中に暴言や拒否が強まる場面
  • 認知症の症状により混乱が生じる場面
  • 職員が助けを呼びにくい場所で対応する場面

これらの場面では、複数名での対応や記録の徹底、緊急時の連絡方法を事前に決めておくことが重要です。

青色の服を着た女性がベージュ色の服を着た高齢者から攻撃されている
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介護ハラスメントと認知症・病気による言動の線引き

ここでは、認知症や病気による言動と介護ハラスメントをどのように見分けるかについて解説します。利用者の状態に配慮しながらも、職員の安全や尊厳を守るためには、適切な線引きと組織的な対応が欠かせません。

認知症による症状とハラスメント判断の考え方

認知症の利用者は、記憶障害や見当識障害、不安感などにより、暴言や拒否、興奮した言動を示すことがあります。そのため、すべての言動を単純にハラスメントと判断するのではなく、病気の症状や本人の状態を踏まえて考えることが大切です。ただし、認知症が背景にある場合でも、職員が暴力を受けたり、強い精神的苦痛を感じたりする状況を放置してよいわけではありません。

判断する際の視点は、以下のとおりです。

確認する視点

内容

発生状況

どの場面で起きたか

頻度

一度だけか、繰り返されているか

危険性

職員や他の利用者にけがのおそれがあるか

背景

認知症、痛み、不安、環境変化が関係しているか

対応後の変化

声かけや環境調整で改善するか

症状として理解する視点と、職員を守る視点の両方を持つことが重要です。

状況を見ながら対応する行為と組織で対応すべき行為の違い

介護現場では、利用者の病気や不安による一時的な言動に対して、職員が冷静に受け止める姿勢も必要です。しかし、「介護の仕事だから我慢するべき」と考えすぎると、深刻なハラスメントを見逃す原因になります。特に、暴力、性的な接触、人格を否定する暴言、契約外の要求が繰り返される場合は、職員個人の努力だけで解決しようとするのではなく、組織として対処すべき問題と考えましょう。

線引きの目安は、以下のとおりです。

区分

状況を見ながら対応する行為

一時的な拒否、不安による強い口調、混乱による発言

組織として対応すべき行為

叩く、蹴る、性的な接触、継続的な暴言、過剰要求

すぐに報告すべき行為

けがの危険がある暴力、脅迫、重大な性的言動

大切なのは、職員が一人で判断しないことです。記録を残し、上司やチームで共有することで、適切な対応につながります。

利用者の尊厳を守りながら職員を守る方法

介護ハラスメントへの対応では、利用者の尊厳を守ることと、職員の安全を守ることの両立が求められます。利用者の言動の背景に認知症や病気がある場合は、本人を責めるのではなく、環境や介助方法を見直すことが大切です。一方で、職員が危険や苦痛を感じている場合は、担当者を変更する、複数名で対応する、家族や医療職と連携するなど、具体的な対策を取る必要があります。

両立のために取り組みたい方法は、以下のとおりです。

  • ハラスメントの内容や発生状況を記録する
  • 職員一人に対応を任せない
  • 複数名で介助する体制を検討する
  • 家族やケアマネジャーと情報共有する
  • 医師や看護師に症状の変化を相談する
  • 必要に応じてサービス内容や担当者を見直す

利用者を尊重しながらも、職員が安心して働ける環境を整えることが、継続的で質の高い介護サービスにつながります。

青色の服を着た人間が人差し指でパソコンを操作
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介護ハラスメントのチェックシートと早期発見のポイント

ここでは、介護ハラスメントを早期に発見するためのチェック項目や、管理者が確認すべき視点、記録に残すべき内容について解説します。小さな違和感を見逃さず、職員を守る体制づくりにつなげることが大切です。

介護職員向けチェック項目

介護ハラスメントは、明確な暴力だけでなく、暴言や威圧的な態度、性的な発言、契約外の要求など、日常業務の中で少しずつ表面化することがあります。介護職員は「これくらいは我慢すべき」と考えすぎず、自分が不安や恐怖、強い負担を感じていないかを確認することが大切です。早い段階で気づくことで、被害の深刻化を防ぎやすくなります。

介護職員向けのチェック項目は、以下のとおりです。

  • 利用者や家族から暴言を受けている
  • 叩く、蹴る、つねるなどの行為を受けたことがある
  • 性的な発言や不必要な接触を受けている
  • 契約外のサービスを繰り返し求められている
  • 特定の利用者への訪問や介助に強い不安を感じる
  • 被害を受けても誰にも相談できていない

複数の項目に当てはまる場合は、職員個人で抱え込まず、早めに上司や管理者へ相談することが重要です。

管理者向けチェック項目

管理者は、職員からの相談を待つだけでなく、現場の変化や職員の様子から介護ハラスメントの兆候を把握する必要があります。特定の利用者への対応後に職員の表情が暗くなる、訪問を嫌がる、記録に同じようなトラブルが続いている場合は注意が必要です。問題を職員の対応力不足として片づけず、組織として状況を確認する姿勢が求められます。

管理者が確認したい項目は、以下のとおりです。

確認項目

見るべきポイント

職員の様子

不安、疲労、欠勤、担当拒否が増えていないか

記録内容

暴言、暴力、過剰要求が繰り返されていないか

利用者・家族対応

苦情や要求が一方的、過度になっていないか

業務への影響

他の利用者対応や職員配置に支障が出ていないか

相談体制

職員が安心して報告できる環境があるか

管理者は、報告を受けた時点で事実確認を行い、必要に応じて複数名対応や担当変更、家族への説明などを検討することが大切です。

記録に残すべき内容と証拠の整理方法

介護ハラスメントが発生した場合は、感情的な印象だけでなく、事実を客観的に記録することが重要です。記録が残っていないと、管理者や関係機関に状況を説明しにくく、対応が遅れる可能性があります。日時、場所、発言内容、行為の内容、周囲にいた人、職員のけがや精神的負担などを具体的に整理しておくことで、再発防止策や契約上の対応を検討しやすくなるでしょう。

記録に残すべき内容は、以下のとおりです。

項目

記録する内容

発生日時

何月何日、何時ごろに起きたか

発生場所

居室、浴室、訪問先、共有スペースなど

行為・発言

実際に言われた言葉や行為の内容

被害状況

けが、恐怖感、精神的負担の有無

目撃者

他の職員、利用者、家族がいたか

対応内容

その場で取った対応、報告先、今後の方針

記録は個人のメモだけで終わらせず、事業所の報告書や介護記録にも必要に応じて残し、管理者と共有することが大切です。

白い服を着た女性が外の手すりに体重を預けて眺めている
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介護ハラスメントを受けたときの職場での対応方法

ここでは、介護ハラスメントを受けた際に職員がその場で身を守る方法や、上司への報告の仕方、利用者・家族への注意喚起や契約上の対応について解説します。安全確保を最優先に、組織で対応することが重要です。

その場で身を守るための初期対応

介護ハラスメントを受けたときは、まず職員自身の安全を確保することが最優先です。暴力や強い威圧、性的な接触などがあった場合は、無理に介助を続けず、距離を取る、他の職員を呼ぶ、その場を離れるなどの対応が必要です。利用者の状態に配慮することは大切ですが、職員がけがをしたり強い恐怖を感じたりする状況では、業務を中断し、自身の身を守って問題ありません。

初期対応の流れは、以下のとおりです。

  • 危険を感じたら利用者から距離を取る
  • 大声で応戦せず、落ち着いた声で対応する
  • 一人で対応せず、近くの職員や管理者を呼ぶ
  • 暴力や性的接触が続く場合は介助を中断する
  • けがや強い恐怖がある場合は速やかに報告する

その場で解決しようとせず、職員の安全を守ったうえで、事業所として次の対応を判断することが大切です。

上司・管理者へ報告するときの伝え方

上司や管理者へ報告するときは、「つらかった」「怖かった」という感情だけでなく、何が、いつ、どこで、誰によって起きたのかを具体的に伝えることが重要です。特に、暴言の内容や身体的接触の有無、同じ行為が繰り返されているかどうかは、今後の対応を決めるうえで大切な情報になります。報告しにくい内容でも、職員個人の責任ではなく、職場全体で対応すべき問題として共有する必要があります。

報告時に伝える内容は、以下のとおりです。

伝える項目

具体例

発生日時・場所

6月1日午前10時ごろ、居室内で発生

相手

利用者本人、家族、面会者など

内容

暴言、暴力、性的発言、過剰要求など

被害状況

けが、不安、介助継続の難しさ

過去の有無

同じ行為が以前にもあったか

希望する対応

複数名対応、担当変更、家族への説明など

報告後は、記録を残し、管理者が事実確認や対応方針を明確にすることが求められます。

利用者・家族への注意喚起と契約上の対応

介護ハラスメントが確認された場合は、利用者や家族に対して、事業所として注意喚起を行う必要があります。感情的に責めるのではなく、どのような言動が職員の安全やサービス提供に支障を与えているのかを具体的に説明することが大切です。

また、契約外の要求や暴力、セクシュアルハラスメントが繰り返される場合は、サービス内容の見直しや担当者変更、複数名対応などを検討します。それでも改善が見込めずハラスメントが継続する場合、介護保険法上の「正当な理由」に該当するものとして、契約継続の可否を検討する必要があります。

対応方法を整理すると、以下のようになります。

対応段階

内容

注意喚起

問題となる言動を具体的に伝える

改善依頼

今後控えてほしい行為やルールを説明する

対応変更

複数名対応、担当変更、訪問時間の調整を行う

関係者連携

家族、ケアマネジャー、医療職と情報共有する

契約上の対応

改善が難しい場合、サービス継続条件を見直す

利用者の尊厳を守りながらも、職員が安心して働ける環境を維持するためには、事業所として一貫した対応を取ることが重要です。

ガラス窓がある空間で手前に青色の服を着た女性と奥側に水色の服を着た男女3人
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介護ハラスメントを防ぐ職場づくりと予防策

ここでは、介護ハラスメントを職員個人の問題にせず、職場全体で防ぐための相談体制や対応方法、法人内ルールの整備について解説します。

個人で抱え込ませない相談体制

介護ハラスメントを防ぐためには、職員が被害や不安を一人で抱え込まない相談体制を整えることが重要です。暴言や暴力、セクシュアルハラスメントを受けても、「自分の対応が悪かったのではないか」と考えて報告をためらう職員は少なくありません。そのため、日常的に相談しやすく、報告しても責められない職場環境を整える必要があります。

相談体制づくりのポイントは、以下のとおりです。

  • 直属の上司以外にも相談できる窓口を設ける
  • 報告した職員を責めない方針を明確にする
  • 相談内容を記録し、対応状況を共有する
  • 定期面談で困りごとを確認する
  • ハラスメント発生時の報告ルートを周知する

相談しやすい体制があることで、早期発見や再発防止につながります。

複数名対応・担当変更・サービス内容の調整方法

介護ハラスメントが発生した場合は、職員個人の努力だけで対処し続けるのではなく、複数名での対応や担当変更、サービス内容の調整を検討することが大切です。特定の職員に被害が集中している場合や、介助中に暴力・性的言動が繰り返される場合は、同じ対応を続けることで職員の負担が大きくなります。安全を確保しながら、利用者への支援を継続できる方法を組織で考える必要があります。

主な対応方法は、以下のとおりです。

対応方法

内容

複数名対応

危険がある介助を一人で行わない

担当変更

特定の職員に負担が偏らないよう調整する

訪問時間の変更

利用者が落ち着きやすい時間帯に調整する

介助方法の見直し

声かけや手順を変更し、刺激を減らす

関係者との共有

家族、ケアマネジャー、医療職と対応方針を確認する

職員の安全と利用者支援を両立させるためには、柔軟な調整が必要です。

再発防止につながる法人内ルールの整備

介護ハラスメントを防ぐには、その場限りの対応で終わらせず、法人内で共通のルールを整備することが重要です。対応基準があいまいなままだと、職員によって判断が分かれたり、被害を受けた職員が我慢を続けたりする可能性があります。どのような行為をハラスメントと捉えるのか、発生時に誰へ報告するのか、どの段階で家族や関係機関と連携するのかを明確にしておく必要があります。

法人内ルールに入れたい項目は、以下のとおりです。

  • 介護ハラスメントの定義と具体例
  • 発生時の報告ルート
  • 記録に残す内容と様式
  • 複数名対応や担当変更の判断基準
  • 利用者・家族への説明方法
  • 契約継続が難しい場合の対応方針

ルールを整備することで、職員が安心して対応でき、組織として一貫した判断をしやすくなります。

紫色の服を着た女性2人と黒色の服を着た男性がそれぞれパソコンを操作
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介護ハラスメント研修の進め方と資料作成のコツ

ここでは、介護ハラスメント研修で扱うべきテーマや、事例検討を活用したレポート作成、研修資料に入れる項目、義務化に備える視点について解説します。

研修で扱うべき基本テーマ

介護ハラスメント研修では、職員がハラスメントの種類や判断基準、対応方法を具体的に理解できる内容にすることが大切です。単に「暴言や暴力を受けたら報告する」と伝えるだけではなく、認知症や病気による言動との違い、職員の安全確保、記録の残し方、家族対応などを幅広く扱う必要があります。現場で迷いやすい場面を取り上げることで、実践に役立つ研修になります。

研修で扱うべき基本テーマは、以下のとおりです。

  • 介護ハラスメントの定義と種類
  • 身体的暴力・精神的暴力・セクシュアルハラスメントの具体例
  • 認知症や病気による言動との線引き
  • 被害を受けたときの初期対応
  • 報告・記録・相談の流れ
  • 利用者や家族への注意喚起の方法

研修内容を現場の実例に近づけることで、職員が自分ごととして理解しやすくなります。

事例検討を使った研修レポートの作り方

事例検討を使った研修レポートでは、実際に起こり得る場面をもとに、何が問題で、どのような対応が必要かを整理します。介護ハラスメントは状況によって判断が難しいため、職員同士で意見を出し合うことで、対応の視点を広げることができます。レポートには、事例の概要だけでなく、発生した背景、職員への影響、組織として取るべき対応も記載すると効果的です。

研修レポートの構成例は、以下のとおりです。


項目

記載内容

事例の概要

いつ、どこで、誰に何が起きたか

問題点

暴言、暴力、過剰要求などの内容

背景要因

認知症、家族関係、環境変化など

職員への影響

不安、恐怖、業務への支障

対応策

報告、記録、複数名対応、家族説明など

再発防止策

ルール整備や情報共有の方法

事例を振り返ることで、個人の経験を組織全体の学びに変えることができます。

介護ハラスメント研修資料に入れるべき項目

介護ハラスメント研修資料は、職員が研修後も見返せるように、定義や具体例、対応手順をわかりやすく整理することが大切です。文章だけで説明すると伝わりにくいため、表やチェックリスト、対応フローを入れると実務で使いやすい資料になります。また、新人職員にもわかりやすいよう、専門用語を避け、現場で起こりやすい場面を例にして説明すると効果的です。

研修資料に入れるべき項目は、以下のとおりです。

  • 介護ハラスメントの定義
  • ハラスメントの種類と具体例
  • 発生しやすい場面
  • 認知症や病気による言動との考え方
  • 初期対応の手順
  • 報告書や記録の書き方
  • 管理者や法人の対応方針
  • 相談窓口や報告ルート

資料を整えておくことで、研修後の行動が明確になり、職員が迷わず相談・報告しやすくなります。

カスタマーハラスメント対策の義務化に対応する視点

労働施策総合推進法などによる法制化の議論が進むなか、介護現場においては令和6年度の介護報酬改定により、先行して運営基準上のカスタマーハラスメント対策が義務化されました。

介護現場でも利用者や家族からの不当な言動に対するルールを適切に運用していくことが大切です。介護サービスは利用者の生活を支える重要な仕事ですが、職員が暴言や暴力、過剰要求を受け続ける状態を放置してよいわけではありません。法人として職員を守る方針を明確にし、研修やマニュアルに反映する必要があります。

制度運用にあたっての重要な視点は、以下のとおりです。

視点

具体的な取り組み

方針の明確化

ハラスメントを許容しない姿勢を示す

相談体制

職員が安心して報告できる窓口を設ける

記録管理

発生状況や対応履歴を残す

研修実施

職員と管理者が対応方法を学ぶ

利用者・家族への周知

契約時にサービス範囲や禁止行為を説明する

義務化された制度に対応するだけでなく、職員が安心して働ける職場づくりの一環として継続的に取り組むことが重要です。

出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律要綱|厚生労働省

水色の服を着た女性がベットの上で寝ころびながらスマホを右手で持ち外を見る
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介護ハラスメント相談窓口と外部相談先

ここでは、介護ハラスメントを受けたときに利用できる職場内外の相談窓口や、相談前に準備しておきたい記録について解説します。被害を一人で抱え込まず、早い段階で相談することで、職員の安全確保や職場改善につなげやすくなります。

職場内の相談窓口に相談する方法

介護ハラスメントを受けた場合は、まず職場内の相談窓口や直属の上司、管理者に相談することが基本です。暴言や暴力、セクシュアルハラスメント、過剰要求を受けたときは、「自分の対応が悪かった」と考えすぎず、事実を整理して伝えることが大切です。厚生労働省も、介護事業者がハラスメント対策に取り組むための「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル(令和4年3月改訂版)」を公開しており、職員が安心して働ける環境づくりの重要性を示しています。

相談時に伝える内容は、以下のとおりです。

伝える項目

具体例

発生日時

何月何日、何時ごろに起きたか

相手

利用者本人、家族、面会者など

内容

暴言、暴力、セクシュアルハラスメント、過剰要求など

被害状況

けが、不安、恐怖、業務への支障

希望する対応

担当変更、複数名対応、家族への説明など

相談後は、管理者が事実確認を行い、職員個人ではなく事業所全体で対応方針を検討することが重要です。

出典:介護現場におけるハラスメント対策マニュアル 2022年(令和4年)3月改訂|厚生労働省

労働局・総合労働相談コーナーを利用する流れ

職場内で相談しても改善されない場合や、相談しにくい状況がある場合は、労働局や総合労働相談コーナーを利用する方法があります。同コーナーでは、いじめ・嫌がらせ、パワーハラスメントなどを含む労働問題について、労働者・事業主の双方から相談を受け付けています。専門の相談員が面談または電話で対応し、相談は無料・予約不要と案内されています。

利用の流れは、以下のとおりです。

手順

内容

1. 相談先を確認する

最寄りの労働局・総合労働相談コーナーを調べる

2. 相談内容を整理する

いつ、誰から、どのような被害を受けたかまとめる

3. 電話または面談で相談する

状況を具体的に伝える

4. 必要な制度を案内してもらう

今後の対応や解決に向けたアドバイスを受ける

5. 職場での対応に活かす

管理者への再相談や改善要望につなげる

外部相談は、職場を責めるためだけでなく、自分の状況を客観的に整理するためにも役立ちます。

白い服を着た女性が隣の人間と会話
10

まとめ

介護ハラスメントは、利用者や家族から介護職員に向けられる暴言・暴力・過剰要求・セクシュアルハラスメントなどを指し、職員の心身や職場環境に大きな影響を与える問題です。介護の現場では、認知症や病気による言動との線引きが難しいケースもありますが、「介護職だから我慢するべき」と一人で抱え込む必要はありません。まずは事例を正しく理解し、発生状況を記録したうえで、上司や職場の相談窓口に早めに相談することが大切です。管理者側も、研修やチェックシートの活用、複数名対応、相談体制の整備などを通じて、職員を守る仕組みを整える必要があります。介護ハラスメントを防ぐことは、職員の安心だけでなく、利用者へ質の高いケアを提供し続けるためにも欠かせません。

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介護ハラスメントに関する

よくある質問

Q.介護ハラスメントの具体例は?
A.

介護ハラスメントの具体例には、利用者や家族からの身体的暴力、精神的暴力、セクシュアルハラスメント、過剰要求などがあります。介護現場では、身体介助や生活支援など利用者との距離が近い場面が多いため、暴言や暴力を受けても「仕事だから仕方ない」と我慢してしまうことがあります。しかし、職員の安全や尊厳を脅かす行為は、組織として対応すべき問題です。

代表的な具体例は、以下のとおりです。

種類

具体例

身体的暴力

叩く、蹴る、つねる、物を投げる

精神的暴力

暴言、脅し、人格を否定する発言

セクシュアルハラスメント

身体を触る、性的な発言をする

過剰要求

契約外の作業や長時間対応を求める

一度だけの出来事でも、危険性が高い場合や強い苦痛を感じた場合は、早めに記録と報告を行うことが大切です。

Q.介護ハラスメントを受けたら退職すべき?
A.

介護ハラスメントを受けたからといって、すぐに退職を決める必要はありません。まずは上司や管理者へ報告し、担当変更、複数名対応、サービス内容の調整、家族への注意喚起など、職場としてできる対応を確認することが大切です。ただし、相談しても改善されない、危険な状況が続いている、心身に強い不調が出ている場合は、自分を守るために休職や転職を検討することも選択肢になります。

退職前に確認したいことは、以下のとおりです。

  • 上司や管理者に正式に相談したか
  • 被害内容を記録に残しているか
  • 担当変更や複数名対応を相談したか
  • 産業医や外部相談窓口に相談できるか
  • 心身の不調が続いていないか
  • 職場に改善の意思があるか

退職は大きな判断です。自分だけで抱え込まず、職場内外の相談先を活用しながら、安全を最優先に考えることが重要です。

Q.介護ハラスメントの相談窓口はどこ
A.

介護ハラスメントの窓口としては、まず職場内の上司や管理者、法人の専門窓口、人事・労務担当などが挙げられます。職場内では打ち明けにくい場合や改善が見られないときは、労働局や総合労働相談コーナーなどの外部機関を利用する方法もあります。同コーナーでは、職場のいじめ・嫌がらせなどを含む労働問題全般を受け付けています。

連絡先を整理すると、以下のようになります。

相談先

相談できる内容

直属の上司・管理者

担当変更、複数名対応、現場での安全確保

法人の相談窓口

組織的な対応、再発防止、ルール整備

人事・労務担当

勤務上の配慮、休職、配置転換など

産業医・医療機関

心身の不調やストレスへの対応

労働局・総合労働相談コーナー

職場での嫌がらせや労働問題の相談

相談するときは、発生日時、相手の言動、被害状況、職場に相談した経緯を整理しておくと、状況を正確に伝えやすくなります。

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